油圧ショベル設計で20数年。「これで完璧」と言えることはないからこそ、設計は楽しい。
新関 拓也 TAKUYA NIIZEKI
≪プロフィール≫
営業職から転職し、大手建設機械メーカーで「ホイール式油圧ショベル」の設計を手掛けている。2025年度技術社員表彰制度で、準MVE賞を受賞。
「ものづくりが好き」という自分の原点へ。
大学では航空工学科を専攻していましたが、家族の影響もあり一度営業職に就いたんです。営業職は実績がはっきりと目に見える点に面白さを感じていましたが、ワークライフバランスがとれない環境で体調を崩してしまって。これを機に自分の適性を見つめ直し、ものづくりに関われる設計の仕事が合っているのではないかと考えて、エンジニアの道を選びました。
振り返ると、子どもの頃から図工や美術、料理など“作ること”が大好きでしたね。特にラジコンが好きで、遊び飽きたら分解して、中学生になってからは自分で本格的なモデルを組み立てたりもしていて、自分が好きだったことが仕事になっているんだなと感じます。

「楽しくてたまらない」追及し続ける設計エンジニアの仕事。
好きが仕事になり、20年以上。現在は、大手建設機械メーカーで油圧ショベルの設計に携わっています。最初の2年間は、ひたすら図面を起こす業務を担当し、3年目からは新機種の設計を行うように。ショベルの設計はもちろん初めてでしたから、最初は渡されたパーツカタログを読んでみても「何がわからないのかがわからない」状態。先輩方が手取り足取り教えてくれたおかげで、業務を通じて少しずつ知識が身に付いてきましたね。6年目以降はお客様からの仕様が保安基準や走行基準を満たしているかの車検に関する検討や見積作成などさまざまな業務を経験し、徐々に設計者として仕事の幅を広げていくことができました。
油圧ショベルには、戦車のようなベルト状の走行装置がついた「クローラー式」と、乗用車のようにタイヤで走行する「ホイール式」があり、私が長年担当してきたのは後者で、世の中に同じ仕様のショベルはほぼないと言えるくらい、お客さまごとに1台1台をカスタマイズしています。マニアックな仕様や特殊な部品を付けることも珍しくありませんが、そうした車体が公道を走行できる姿勢を保てるか、安全基準を満たしているかを都度計算し、仕様を確認するのが私の役割です。
ホイール式は、クローラー式と比べ出荷される台数が少ないのですが、やってみると、ホイール式ならではのマニアックさがたまらなくて。例えば、ショベルの先端に取り付けるアタッチメント1つとっても、土を掘ってすくう用途だけではなく、コンクリートを砕くためのもの、サトウキビの収穫用に特化したものなどもあります。他にも、オペレーターが乗車する部分にガードを付けた林業向けのショベルや、クレーン車代わりにできるものなど、本当にいろいろな仕様があるんですよ。
油圧ショベル設計の面白さは、どこまでも追究し続けることができ、「これで完璧」と言えることがないところにあると思います。時には、試作機を組み立てる段階で設計ミスが判明するようなピンチもありますが、トライ&エラーを繰り返し、完成に近づけていくためのすべての工程が楽しいんですよ。最初の試作機がうまく動いたとき、試験で実際に走らせるとき、新機種に使う一点ものの部品が手元に届いたとき、世に放たれたショベルを街で見かけたとき……もう、全部が楽しくてしょうがないんです。

若手が失敗を恐れず果敢に挑戦し、仕事をより楽しめるように。
私が大きな影響を受けたのは、配属3〜4年目ごろに出会った上司です。上司は新しい取り組みを積極的に行い、若い人たちの意見も汲み上げてくれる人でした。若手が仕事を抱え込んでいると、マネジメントをもっと力を入れて取り組むよう社内に働きかけたり、「プライベートがあってこその仕事だ」と言って、ノー残業デーを作ったり。おかげで部署の雰囲気は和気あいあいとしていて、新しいチャレンジにも積極的に取り組むことができました。
私はリーダーとして30人近くのメンバーのマネジメントも行っているのですが、若手を育てる上で心掛けているのは、相手の意見に対して否定的なことは言わないこと。何か1つ相談されたら、それがもし間違っていたとしても「確かにそういう考え方もあるよね」と受け止めた上で、「こっちの方向から考えてみてもいいんじゃない?」と、変化球を投げるようにしています。そうやって視野を広げながら選択肢を増やし、一番良い方法を一緒に探し出す。これはマネジメントにおいても、エンジニアという仕事においても、重要な考え方だと思います。
若手には、どんどん失敗を恐れずに何にでも果敢にチャレンジしてほしい。成功しかしていない人は存在しませんから。たとえ失敗をしてもそれで終わらせないで、「次はどうすればうまくできるか」を考える。それを楽しめるようになれば、大きな成功につながるはずです。
自分がこの仕事に就いている間は、若い人たちにもっともっと、いろいろなことを伝えていきたいですし、何より「エンジニアの仕事が楽しい」と思える人たちを増やしていきたいですね。
取材日: 2025.9.5