大学では情報工学を学び、家電や自動車など機械を動かすソフト開発で広く使われるC言語の習得に打ち込みました。就職活動の軸は、学んだ知識を活かしてソフト開発に携わること。なかでもオープンアップネクストエンジニアは、さまざまな企業の現場で経験を積める点に惹かれて新卒入社しました。
入社後まずは「ソフトをやるなら、1度装置自体やモノづくりの流れも知っておいたほうが良い」という会社からのアドバイスを受け、半導体製造装置の現場研修を受けました。そこで目にしたのは、異常時に装置を止める制御など、機械を動かすコードが実際の現場でどう働くのかということ。自分の目で確かめられたことは、のちのソフト開発における設計の精度を高める大きな助けになりました。
約半年間の現場研修を経て、希望していた車載ソフト開発の仕事のキャリアが始まりました。システム要件のまとめや開発・設計・テストへと進む流れなど、システム開発の基礎を実践で身に付けて以降10年、車載ソフトの仕事一筋です。
就業先は、車載機器の組込みソフトを設計から評価まで一貫して手掛ける会社です。私たちが普段乗る車は、今や無数のコンピュータが連携して動く巨大なシステム。アクセルを踏む、ウインカーを出す、シートの位置をボタンで記憶する。そうした動作の一つひとつを、車に積まれた数十個もの小さなコンピュータが制御しています。その「動かし方」を書くのが、車載ソフトエンジニアの仕事です。配属当初はプレイヤーとして、エンジン制御やシート、カーナビへと業務の幅を広げました。
これまで経験した仕事の中で、特に記憶に残っているのは、入社4〜5年目に携わったバックカメラの画質向上プロジェクトです。このプロジェクトは発注元の自動車部品メーカーにとっても前例のない挑戦で、当然参考事例もなく、チームに正解を知る人はいない。そのため4〜5人の小チームで仮説を立てては試し、失敗しては原因を探る日々。1年以上尽力した結果、画質が目に見えて向上したときは感激しました。
こうした姿勢が評価され、新規プロジェクトでPMをやってほしいと声を掛けてもらいました。不安は大きかったですが、自分に任せてもらえたことが嬉しくもありましたね。
とはいえ、立ち上げ直後は慣れないマネジメント業務に苦労する日々。例えば口頭でメンバーに依頼した作業が、リリース直前に手つかずの状態だったことが発覚した時には、自分のマネジメント不備を反省しました。そこで「誰が何をいつまでにやるか」がひと目でわかるチェックシートを導入。人の記憶に頼らず、仕組みでミスを防ぐ考え方は、今でもチーム運営の土台となっています。
徹底した仕組みづくりによるチームマネジメントを続け、現在は25名のチームを率いるPMとして、ブレーキ製品のソフト開発の日程管理を担っています。リリース日から逆算して計画を立て、毎朝メンバーの進捗を確認。優先順位を整理し、成果物を誤字脱字から内容の精度まで確かめるのも大事な仕事です。
なかでも最も神経を使うのは、納期の管理です。リリース日は動かせない一方、半導体不足で基板が手に入らないなど、外部要因で計画が揺らぐこともあるからです。そんなときは関係部署やお客さまに協力を仰ぎ、リリースまでに必ず行うテストと、のちのアップデートで対応できる検証とを見極めて、納期を守り抜きます。こうした優先順位の判断こそ、PMの最も重要な仕事です。
さらに、メンバーが最大限の力を発揮できる状態を保つのも、PMの役割です。トラブル発生時、責任感が強く抱え込みがちなメンバーには「やるべきことをやっていれば、気にしなくていい」と伝えることも。開発を前に進めるのは現場の一人ひとりですから、リスペクトは惜しみません。
メンバーとの向き合い方には、もう1つ原点があります。プレイヤーだったころの自分は、仕事がうまくいかない時、不安や焦りを感じ余裕がなくなってしまうことがありました。それを変えてくれたのが、当時のチームリーダー。どんな状況でも、メンバーに合わせたコミュニケーションを欠かさず取ってくれたので、安心して働くことができたんです。その背中に学び、自分も、「相談しやすく話しかけやすい雰囲気づくり」を心掛けています。そのおかげか、他チームから「鈴木さんのチームは楽しそう」と言われることもあり、素直に嬉しいですね。
そうしたチームの雰囲気作りと同様に大切にしているのが、日々の仕事における「改善」の視点です。これまで10年間開発に携わり、プレイヤーからPMに役割は変わりましたが、自分にとって仕事の本質は変わりません。ここまで情熱を持って続けてこられたのは、同じ作業の中にも、必ずどこかに改善できる点を見つけてきたからだと思います。たとえば、長年目視で行ってきたテスト結果の確認には、判定を自動化するツールを導入し、精度と効率を同時に高めました。淡々とこなすのではなく、自ら改善の種を探しにいく。その姿勢が、長く同じ仕事を続けるモチベーションになっています。
こうした姿勢は、メンバーへの指導にもつながっています。メンバーには「言われたことをやる」のではなく「作業の目的を意識すること」を伝えています。目的がわかれば、優先順位を自分で判断できる。過去の失敗を乗り越えて、教えられたことを次のプロジェクトで1人でやりきってくれた。そんな成長した姿を見たときが、PMとして何よりのやりがいを感じます。今後は指導の力を磨いて、任せてもらえる仕事の幅を広げたいですね。